その中の優しい人は、草を生やしっぱなしで、収量も少ないし現実的ではない農業だけど、 環境にはいいよね、と優しく言う。誤解されているといつも思うが、あまり弁解に注力したくない。 何故なら、口で説明すると自然農はポエティック=詩的に聞こえ現実味がないから。 現代の畑しか見たことのない人に説明するのは、非常に難しい。 リアリストで効率を重視する私が、(時々夢見がちな人間と勘違いされるが、 非常に現実的で打算的な一面がある)自然農に興味を持ち、ここまで惹きつけられている のにはわけがある。それは、この農法は非常に効率的であり、私が目にした農業の中で 最も現実的な農業であると断言できるのだ。 今回、自然農園たかはしを再訪して、その思いはより強くなった。 自然農法は大まかに説明すると、耕さず・除草せず・肥料を与えず・農薬を使わない、農業である。 自然農にも色々なやり方があり、人によって肥料や除草の概念は違う場合があるが、最も大きな特徴は<不耕起>耕さないことだと思う。 春、何もなかった土に日差しが射し、土の下に眠っていた草花の種が生育を始める。梅雨の時期にはたっぷりの雨を地中に蓄え、日差しの強さと共に雑草達は栄華を極める。その間を蝶や昆虫達が舞い、雑草はぐんぐんと成長を続け、やがて秋になり、次の年へと種を落とし、寒さと共に枯れ、人の高さほどあった雑草達は地べたに這うように朽ちてしまう。生命活動を終えた昆虫達も枯れた草木と共に横たわる。その繰り返しが何層も何層も営まれて土ができていく。 こうしてできた土は驚くほど柔らかい。手の中から土がパラパラと滑り落ちていくような感覚を覚えるほどである。 高橋さんの畑の中で最も手付かずで長い間放置されていた場所。何年も何年も木々が葉を落とし、草木が生命活動を繰り返した場所は、天然の栄養が一杯つまったとっておきの宝物である。 ここに植えられたモロヘイヤ、なす、空芯菜が記事トップの写真。無肥料と思えないほどの成長である。回りをぐるっと囲ったニセアカシアは成長が早い為、少しづつ伐採をしながら薪ストーブの薪になっていく。土のサイクルと同じように、自然農の畑には無数の循環の形が見て取れる。多くの自然農を営む人がそうであるように、高橋さんはたった一つの刈払機(草刈り機)しか機械を使わない。最小限のエネルギーでとてもコンパクトな農業である。 テントウムシダマシに葉を食べられてしまい元気のないトマト。まぁこんな年もあるよねと高橋さんは笑っていた。その代わり今年はきゅうりの元気がいいからいいんだ~。 ほんとに良い考え方だなー。一年通して全てが豊作であることを目指すことがゴールではないのだ。 それは必要でない木を刈り、必要である木を残し畑を切り開いたからであって、 偶然の産物ではないのだが、そこにまた循環があり、農園に恩恵をもたらしている。 草をある程度生やしたまま、なるべく自然の形を崩さず営む形の農業なので、 有機農業などから比べると収量が落ちることは否めない。 だが、こうやって自然の恩恵を受けることで、魅力的な農産物を手に入れることができる。 高橋さんはもともと林業に関わっていた方なので、こういった木々についての造詣が深く、 野菜セットに山の幸が入ってくることも魅力的である。 人が自然に一度手を入れたならば、永遠に入れ続けなければならない。 自然農は手の入れ方が絶妙で、人間が最小限に介入する農業である。 機械を使わず、身の丈にあった農業を営むことができ、最小限のコストで、 ほぼ人力でやることができる。種取りも積極的にするので、土地さえ用意できれば、 投資も少なく、コンパクトに農業を始めることができる。 他の農法に比べて収量が少なくなることや隣人の理解を得ること、土の層ができていくまでの時間、 ハードルがないわけではないが、トータルでバランスの取れた形だと思う。 そのハードルに怯えず、一つの事柄に固執することもなく、 自由な発想で自然に農業して欲しい。 もし肥料も入れず、耕すこともせず、農薬もかけず、これだけの野菜が豊かに実る様子を 見たらみんなはきっと知りたくなる。やりたくなる。食べたくなる。 もっと皆に知って欲しい。懐疑的で知らない人も食べてみたらいい、見に行ったらいい。 百聞は一見にしかず。と思って今日は何時間もかけて久々に一生懸命、記事、書きました。 自然そのままでもなく、かといって、人が出すぎた真似をするわけでもなく、 まぁ、そんな話は置いておいて、木があって、緑があって、蝶が舞って、 野菜があって、木に実がなって、とにかく、気持ちのいい畑なんだよなー。 というわけで、8月より「パンと野菜のセット」季節限定で復活します。 もちろん今回は自然農園たかはしとのコラボです。 なんだよ、宣伝かよ!ってまぁまぁ怒らないで、、食べてみてくださいね!
by wazawazapan
| 2011-07-31 07:21
| ストーリーのあるモノたち
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