ロケットストーブ式石窯について、今、書けること。
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今日はこの窯の中で何が起きているのか説明をしてみたい。
これはパンのストーリーであり、ロマンであるのだ。
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午前5時。大抵の場合この時間に起床し、私の一日が始まる。正確に言うと2時に一度起きているのだが、まぁそのことを考えるのは今はやめておこう。起きるとまずパンの成形をするか。生地の状態によっては先に火を付ける。火を付けてしばらく経過し、おきができてきたのがこの写真。

わざわざのパン窯は、ロケットストーブ式で作っている。窯の下部に焚き口があり、そこで薪を燃やすと、上部のパン窯部に炎が噴射する仕組みである。このロケスト方式は非常に熱効率がよく、薪の使用量が少なくて済む。また、完全燃焼するため煙も出ず、いいところずくめであるが、パンを焼けば焼くほどわからなくなっているのも事実である。

上記にあげた利点は確かに素晴らしい。が、最近、この窯の弱点も見えてきている。
構造とともに少し解説してみようと思う。

*この窯を何故作ったか?

私は非力な女です。パン屋を始めたからには薪でパンを焼いてみたいと考えていましたが、
勇気がありませんでした。薪で焼くパン屋の苦労は人づてに聞いていましたし、
薪の使用量も相当量と聞いていたので、体力+コストの面で、薪窯は憧れではあるが、
現実的ではないと考えていました。

ロケットストーブのことを2年ちょっと前に島根の岡野さんのブログで知りましたが、
ロケストとパン窯が結びつくことはなかったです。

劇的に考え方が変わったのが1年半前の東日本大震災でした。
原発で作られたエネルギーに頼る暮らしに歯がゆさを感じ、薪窯への憧れが増したのです。
そこへ島根の岡野さんが大震災で被災した人たちの為にと、瓦を使ったロケストを作ったのを
見たのです。それまでのロケストは鉄で作られており、石窯を連想することはありませんでしたが、
瓦=石窯と連想するのは容易かったです。早速、岡野さんにアポイントを取り、
島根に向かいました。

それからは早かったです。
地元で炭焼き職人をしている中野さんに連絡し、すぐに窯の構造を話して、
パン窯を作れるかどうか打診、岡野さんも長野に来て下さり、構造について何度か話し合い、
石窯で焼いたことのないパン屋+パン窯を作ったことのない窯職人+ロケストの達人で
知恵を出し合って作ったのが、このわざわざの石窯です。

*ロケットストーブについて

筒状の下で火を焚き、上昇気流に乗せることによって少ないエネルギーで
強い火力を維持することができるのがロケットストーブです。
自然に吸気にするので火付も楽で、完全燃焼するため煙が殆ど出ません。
簡単に説明するとこんな感じです。
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左の図のようにカーブ部分にアールをつけると、カルマン渦が発生せず、
強い火力を維持することができます。
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窯の内部はこのように炎が噴射している状態。下は静かなのに、上がゴーゴー。この状態になると、加熱スピードが上がって一気に200度、250度、300度と加速度的に温度が上昇する。

*わざわざ式 ロケットストーブパン窯の構造

中野さんのアイディアで全て地元の素材を使って作ることになった石窯。
石は近くの山から中野さんが採石したもの。中野さん手作りの粘土。素材は集まりました。
ロケストの利点を活かし、パン窯を作るにあたって気にした点は、断熱。
石窯の蓄熱性を高めるために40cm近く粘土の壁を作り、素早く窯内の温度を上げるために
2本のロケストを内蔵することにしました。
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窯が稼働してから4カ月が経過しました。夏場にコツを掴んだため、
今の季節の変わり目、めちゃくちゃ苦労しています。

*利点

この窯の良い点は想像通り、煙が出ません。
たまに火つけを失敗すると不完全燃焼になり煙が出ますが、殆ど出ないと言っていいでしょう。

燃焼部とパンの焼き床が別々の為、手入れが楽。これ大事です。
モップでササッで生地を入れられます。

追いだきができる。簡単に火つけができるため、温度が下がり気味になった時に
すぐ薪をくべて温度をコントロールすることができます。

割り箸、小枝などが燃料となりえる。
火つけだけでなく200度くらいまではこれらの資源で温度をあげることができます。
ただ、ずっと焚口についてくべ続けなければならないので、作業性としてはよくないです。
如何にして早く、太い薪に着火するか。そのあたりを狙うと作業効率はいいです。

作業としてはかなりスムーズです。思ったより薪窯の負担はないと感じています。

*欠点かもしれない点

上昇気流に乗せて、大きな炎を出すとパン窯の上部に直接火が当たり、
上火が強くなりがちです。これは火力の調節がうまくなると修正できそうです。

下火が弱い。上記の燃やし方をすると、上部が強くなる分、下火が弱く感じます。
赤外線温度計で計測しますが、温度の下降の仕方が下火の方が早いです。
これは燃焼時のコントロールで改善する可能性も現在見出しています。

例えば、350度近くなった状態でその状態をキープするような薪のくべかたをすると、
蓄熱性能が高まり、温度の下降が緩やかになります。こういう状況を意図的に作ると、
下火と上火の温度差が殆どなくなることがわかりました。
しかし、薪の使用量が一気に増えるので、パンのスケジュール管理を徹底して、
連続でパンを焼くようにしていかなければなりません。

*まだわからない点

薪の使用量が多いか少ないかは、実感としては少ないような気がします。
ただ同じ規模の窯と比較したことがないため、現在のところ何とも言えません。
実際、どれだけの薪を燃やして、どのくらいの量のパンを効率よく焼けるかということだと
思うので、ただ単純に使用した薪が何束だったということではない気がします。

*薪で焼くパン焼きについて

「薪でパンを焼く」ということはそれほど難しいことではありません。
ただ、「薪で一年中同じクオリティでパンを焼く」ということは相当難しいです。
一番の難しいのは、薪窯の温度上昇と、パン生地の発酵を合わせることです。
しかも相手は天然酵母。
しかーも、ウチの厨房はホイロなし、温度管理一切なしの天然工房なわけです。

今、毎日、パンを焼くのが真剣勝負です。
温度計とにらめっこしながら、戦ってます。
これから厨房の環境を整えて行くことが必要だと感じています。
まずはホイロのようなものを作ろうと思ってます。
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さて、夏のパン焼きの様子です。
石窯を温めている間にパンが発酵してくる。みまきカンパーニュ12個分が窯入れを待っている。ここからさらに発酵させてギリギリを狙うのだが、窯の温度と発酵のせめぎ合いがこの時にあるのだ。あと10分待ってくれ、いや、もう今入れたいんだ、などという諍いが。。。
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折り合いを付けてクープを入れる。この時のこれ、ちょっと生地が若い。本当はもう10分、20分待ちたかったけれど、窯の温度が低下しそうだったので、窯入れを選択。わざわざのZをクープに入れてます。生地の状態がいいので、ナイフでスッとなでるとパカッと開いていきます。
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窯入れは炎が収まってから始める。スチームを手動で入れるので、手前から4個ずつ生地を入れスチーム、パン生地を奥に移動と言う形に、現在は落ち着いている。
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順番コに生地入れ、スチーム、移動を繰り返す。
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炎が見えるが、これは下にオキがあるのでたまに気流に乗って出てくるだけで、火はついていない状態。
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全部、綺麗におきました。これで蓋を閉めて時々中を確認しながら、待つというわけです。

というわけで今日はこの辺で。
今、わかっている殆どのことを書ける限り書きました。
情報を公開したのは、これからロケスト式パン窯を作る人が出てくるだろうし、
さらによいものを作れると思うからです。パン屋は過酷な仕事です。
「楽してパン屋をやりたい」は私の永遠のテーマでもあります。
オープンソースにして、どんどんお互い高め合って行ければと思います。
是非、情報交換してくれませんか?

正直なところ、薪窯のパン作りはまだ始まったばかりです。
自分の足りない部分は、薪窯のパン作りを一人でやっているという点だと思います。
これから沢山の先人に教えを請いながら、勉強したいと思います。

まだまだ、うちのパンは旨くなる!

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by wazawazapan | 2012-11-06 21:42 | パン考


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