鍛冶工房上田
もし、マイスターという言葉が一流の名工をさす言葉としての意味合いならば、
これからのマイスターはこうやって生まれるのかもしれない、と思った。

例えば、後継ぎという感覚が少なくなり、代々の職人の家系が途絶えていくように、
手仕事の技術を後世に伝えるという使命もなくなり、ただ、その技術が途絶えて行く前に、
自力で仕事を見つけ出し、手さぐりで自分のやりたいことを形にする力を備えているような。

自分で見つけて、自分で考えて、この形に行きつくのかもしれない。という感覚で手仕事に取り組む、
そんな過程を経て生まれていくマイスター。

今日、山梨県の鍛冶工房上田さんの工房を訪ねてきました。
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昨今私の会う魅力的な人は、魅力的な小屋を自分で建てている。
島根のじいしかり、炭焼きの中野さんしかり、いい男(わざわざ基準)はどうやら小屋を持ってるらしい。
上田さんもやっぱりセルフビルドでイカシタ小屋を建てていた。
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このガラス窓の透明感がありすぎて、外を覗こうと激突したら、上田さんによく鳥がぶつかるんですと
フォローされたが、そのフォロー、全然フォローできてないですから(笑)
まぁ、うちの窓にもよく鳥、ぶつかりますけどね!笑。
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こういう感性が好き。
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自作のストーブ。
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つくづく私は木と鉄の組み合わせが好きなんだと思います。
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とりあえず見てみます?で始まった鉄の授業、包丁の作り方。
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用意されたのは2種類の材料。地金と鋼。
鍛冶工房上田の包丁は、地金で鋼を挟んだ3枚構造の三枚打ちで作られている。
安来鋼 青紙二号という素材を用い、切れ味が長持ちし刃持ちがよいのが特徴である。
半年に一度、研げばよいくらいで、現に私は毎日使って半年が経過しているが、
全く切れ味が衰えた感じはしていないし、研ぐ必要性も感じていない。
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火床に自家製の炭を入れ熱する。そう、上田さんは驚くべきことに燃料の炭も自分で作っている。
炭で鉄を熱することの利点は火の付きがよくすぐに仕事に取りかかれること、
熱の回り方がよく焼きむらがないこと。
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熱した鉄を叩く。
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そして、熱する。
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切り込みを入れて、
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で、鋼が切れた。
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地金も同じように熱しては叩く。
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そして曲げる。
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地金の間に鋼を入れる。
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ここからは鍛接という作業に入る。熱しては叩くを繰り返し鉄と鋼を接合させ、
均等に伸ばしながら鍛えていく最も重要な作業の一つであり、
ここで失敗すると全ての作業が無になると、上田さんは言う。
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叩いている最中はカーン!カーン!ととてつもなく大きな音がしているので、
話すことはできない。私はカメラ片手にずっと上田さんを追っていたのだが、
上田さんはあまりに私がカメラでカシーッカシーッと夢中で撮影してるので照れて笑ってた。
鉄を叩くまでの合間、鉄を熱している最中に色々な事を話した。
鍛冶のこと、担い手がどんどん少なくなっている現状の中で上田さんが鍛冶という職業を選択したこと。
私のパン屋のこと。お互いの共通点は手仕事にこだわりを持っており、
それをいかに効率よく仕上げるかということ。やっていることは違えど、考えてることは同じだ。
嬉しかった。
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花火よりこっちの方が断然好き。
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途中、グラインダーで削る作業を挟むも、熟練した職人はこの工程はやりませんと上田さん。
均等に鍛接できているかどうかを一度こうやって確かめるそう。
鍛冶歴8年はまだまだだそうです。鍛冶は経験が一番だからと。
私のパン屋なんかたった4年目。ひよっこの風上にもおけませんね。。。
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そうこうしてる内に包丁の原型が見えてきた。
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熱して叩いて熱して叩いて1時間は経過していたと記憶してます。
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夏、地獄ですよね?はい。お互い熱中症には気をつけましょう。とパン屋的変な思いやり。
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写真が似たようなのは、そういう地道な作業の繰り返しから、この包丁ができているからです。
同じ作業を日々、年々、繰り返し行い、その中で微妙な変化を見極める力が付く、それが経験です。
きっと、この作業に満足する日はこないでしょう。
いつもよりよい方法を探している、それが職人というものです。
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そして包丁の原型ができました。
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左が今回作ったもの。ここから削って右側の状態にしていきます。
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右から段々に仕上げていく工程。
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そして、これが柄の部分の材料。山桜、チーク、紫檀などの材でチョーかっこいい柄が
付いてるんですが、これも上田さんが手作り。この材料から柄を削りだします。
普通は外注しますよ。でも全部自分でやるの。そこが好き。

私は今日のこと忘れないと思います。
島根のじいに会った時もそうでしたが、こう言っては皆さんに失礼かもしれませんが、
心の奥底からシンパシー、感じました。

私はパン作りにおいて、手捏ねや長時間発酵にこだわったりしながら、オリジナルなパン作りを
突きつめています。それは手をかけているようですが、如何にして手仕事で楽するかということを、
自分なりに考えた結果であり、矛盾ですが、機械化に頼らず利便性や効率を追求しているのです。
傍から見れば、非効率な薪窯も、実は自分にとっては効率の追求であったりして、
なるべくしてそうやって原点に近付いていることを感じてます。
ただ、昔に回帰するわけではなく、あくまでも現在的なエッセンスを取り入れています。

上田さんは、鍛冶を始めるにあたって、鍛冶の基礎を2週間習った後、
独学で鍛冶に取り組んでいるそうです。柄の付け方も独特で、創意工夫を重ねた上にできたものです。
和包丁のようで和包丁でない、こんなモダンなデザインの包丁は初めて見ました。
上田さんのこれまでの数々の体験、積み重ねられた経験によるものだと思いました。

私も色々なことをやった末に、パン屋やってます。
でもその色々なことが今のパン屋につながっていないのかというとそうではありません。
それまでがあったからこそ、パン屋になれた気がしています。

一代で、独学で、職人になる、そういう同じ試みをしている人に今日出会った喜びでいっぱいです。
貴重な時間をありがとうございました。

でね、ごめん、まだ完成品の写真を撮ってないの。。ちょっと待ってて、明日撮るから!
今日はここまで。スマナイ、みんな。待ってて!!
それから、もちろん、この包丁、今週の木曜日から店舗で並びますから。
是非、見に来てください。
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by wazawazapan | 2012-04-09 22:41 | ストーリーのあるモノたち


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