愛しのしょうちゃん
確定申告をしに上田に行く。私と言えば、経理もロクにやらないで全部夫に頼りっぱなしで、
最後の清書をして出すだけなのだが、それでも何故か間違えて時間がかかってしまう。
今日は、早く終わらせて帰りに立ち寄りたいところがあるのだ。

あれからどっぷりと鬼平犯科帳に浸かってしまい、夜な夜な江戸に遊びに行く。
こないだまではフェルメールを懐かしんで読み漁っていたので、
17世紀ヨーロッパから江戸時代にトリップとは、なかなか乙なもの。

この勢いで行かなきゃいつ行くんだと、勇み足で向かった先は、
上田市にある池波正太郎真田太平記館。長野に引っ越してきてから8年目にして初上陸である。
今か今かと訪問を狙っていたが、確定申告に出かける前まで考えもしていなかった。
車に乗っている最中に寄り道のルートを考えていると、ふと思いついたのだった。

館に入って、2階の池波さん直筆の原稿をとりあえず全部読んで満喫する。
同時に入館したサラリーマンらしき男性が、ぐるりとホールを一周して出て行ったのを横目に、
あいつの好きはあの程度か、フッ、風上にも置けんと心で声を飛ばす。
それで熱中して見ていたら、時間がなくなって下のアトラクションはスルーしてしまった。

池波さんがこれまでに出した小説やエッセイを並べてあったのだが、ほとんど持っておらず、
収集魂に火がついた。全部集めてやると心の中で誓う。ルールは新刊では買わないこと。
出会いを楽しみながらボチボチ集めていこうと、家に帰ってから池波リストを作ると、
ザッーと調べただけでも200冊程度は出ていた。また一つ楽しみが増えてしまった。

鬼平犯科帳の平蔵は男の中の男だ。もんのすごいかっこいい。
1巻からわりと単調で、池波さんの連続モノの中ではそれほどでもと、
牽制しながら読んでいたのだが、3巻で池波節が炸裂しだすともう止まらない。
新緑を形容する際に、"指先から緑に染まるほどの緑"とあった瞬間に、
目の前に平蔵が新緑の軽やかな緑の中で、部下と団子食べてるシーンが、
目の前にばば~んと出てきて、その形容の鮮やかさにあまりに感激して、
夫に「やっぱ池波しゃんすげーよ」と唾を飛ばしながら興奮して話すと、
夫がくすくす笑ってる。○ちゃんが一番面白いよ、だって。
違うよ、平蔵がかっこいいんだよ。平蔵がさ。

池波さんの文章は誰にでもわかる平易な文章で、速やかに構成されている。
世の中には難解な文章ほど高尚だという風潮も色濃くあるが、
私は、難解な問題も誰にでもわかる平易な文章で書くことが出来る人が
本当の書き物を書く人だと思っている。
昔は様々な本を読み、大衆的な小説をけなした時期もあった。でも今は違う。
難解な文章を難解でなくすることが一番難しく、難解な物事を難解なまま話すのは
誰にも出来る何の面白みもない行為なのだ、と思うのだ。
だから、大衆的な中にも洗練された文章を書く池波さんが好きなのだ。
簡潔、端的、形容が見事で、文言が川の流れにのって動いていく。
手から迸るままに描かれた世界。これぞ日本語、美しい。尊敬しています。

ひっさしぶりに池波さんを楽しんでます。

以前、真田太平記を読んでいた時に、酔っ払って寝ちゃって、それで夫に寝ぼけて
「貴様、石田軍の手のモノかっ!!!!」って怒鳴って、関が原にうっかりトリップ
しちゃって迷惑掛けたことがあったんだけど…気をつけないとな。
「火付盗賊改頭、長谷川平蔵である!」なんつってまたやらないようにしないと…
今度は病院に入れられちゃうぞ。あぶない、あぶない。

新しいタグつくっちゃおぅ~~っと。
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by wazawazapan | 2011-03-08 23:09 | パン屋のたわいもない話


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