模倣はオリジナルの原点2
以下、 2011-01-16 に書いたものです。
半年以上前に書いた記事ですが、長くなりますが、よろしければお読みください。

----------------------------------------------------------------

(模倣はオリジナルの原点1を書いた後、書いた2ですが、1があまりにも深く且つマニアックに
 なってしまったため、リリースできません。いつかうまく書きなおしてリリースしたい気持ちを
 持って2の投稿です。)

上田市には私以外にもフェルメールファンがいるらしい。
模倣とオリジナルの話をブログに書いていた頃、図書館に行くと、またフェルメール関連の
本が数冊入荷しており、見つけた本を全部借りてきた。

中でも「私はフェルメール」が飛びぬけて面白く、感想を書きたくて仕方なくなってしまった。
amazonでレビューでも書けばよいのかもしれないけれど、ブログに書いておけば、
どんな人がどんな本を好んで読んでいるのかわかって面白いと思い、
ダラダラと感想文を書くことにした。

ファン・メーヘレンは歴史上最も有名な贋作者の一人である。
普通、贋作者というものは、有名な画家の絵をトレースするように全てを同じように
描くのが一般的である中、メーヘレンは、贋作する画家の技巧や作風、時代背景を読み取り、
研究に研究を重ね、贋作する画家の新作を描くという手法を編み出したため、
贋作が見破られることがなく、彼がオランダの絵をナチスドイツに売ったという国家反逆罪で捕まり、
身の潔白を表明するために贋作者であるという自白に及ぶまで、彼の贋作は全て真の作品であると
信じられていたのだった。その中にはかなりの酷い作品も含まれていたが、
贋作を作り始めて間もない頃、最も力を注いで描いたフェルメールの贋作「エマオの晩餐」が
絶賛されており、その作風が他の作品に香ったため、後の贋作は駄作であっても、
「エマオの晩餐」を描いた作風と同一ということでまかり通っていったのだ。

メーヘレンの描いた「エマオの晩餐」はフェルメールの最高傑作とまで言われ、
贋作者の作品が作者本人の代表作とされてしまう前代未聞の事件にまで発展した。
アムステルダム美術館に高々と掲げれた作品を自身で見た時に何を感じたのかは
わからないが、彼の美術界における復讐はこの時既に完遂されたと言ってよいだろう。

メーヘレンの行為はもちろん、賞賛されるべき行為ではないが、
私は模倣がここまで行き及んでしまったことに、またどうしようもない人間の性を感じたのだった。
いつの時代にも素晴らしい先人がいて、私たちはその人たちに近づくべく努力を重ね、日々を生きる。
積み重ねられた歴史をトレースするように模倣をし、いつの日かコピーの域から出ようとする時がくる。
そこで、今まで学んだことを自分のオリジナルに転換する作業をしなければならないのだが、
メーヘレンは面白いことに17世紀のフェルメールの絵画を、19世紀の自分が描くための技術を
オリジナルの画法として確立してしまったのだった。

17世紀のキャンパスを探し、その絵を綺麗に剥がし、17世紀に使われたフェルメールが好んで
使った絵の具を調合し、200年の時を埋めるために、ホルムアルデヒトを溶剤に用いることを思いつき、
描き上げた絵を窯で焼き経年して絵の具がひび割れたような亀裂を入れることに成功する。
その後に、戸棚の奥深くから探し出されたような埃をつけて時を演出した。
これは紛れもなく彼のオリジナルの画法で、たった今描いた絵が、あたかも17世紀に描かれた絵
のような錯覚を起こさせたのであった。

そこまでできるのならば、そこまでするのならば、
何故オリジナルを描かなかったのか。読みながら何度思ったことか。
この無駄な努力といっていいのであろうか、他の活かし方はなかったのだろうか。
答えは簡単なのかもしれない。

「本物だ、だから美しい。」ジョン・バージャー

事実、メーヘレンは贋作者としてその名を世間に轟かせた。
フェルメールの名を借りて。

結局は、私達の目は見識のある人の言葉によってモノを見るのだ。
権威あるものの言葉は己の目を曇らす。
見識のある人が本物だというから美しいのだ、というのは本質を見抜いた言葉である。
芸術の世界は人事ながらほんと大変だ。その点パン屋はいいね、食べて終わり。
あー旨かったは、人それぞれ。食べてなくなって食べてなくなって。
うん、プレッシャーがないね。

最後に気になった名言を。

「いかなるものも模倣したくないという者は、何も生まない。」サルヴァドール・ダリ

19歳の時にダリの企画展を見に行ったことがあるけど、
ダリはフェルメールが大好きだったらしい。
時計のひん曲がった絵とかそんなのばっかりで奇妙奇天烈に思えたけれど、
フェルメールの模写なんかしたりしてるのを知って驚いた。
十数年で繋がったなぁ。ダリとフェルメール。

フェルメールの画集、やっぱ買おう。おっきいやつ。
[PR]
by wazawazapan | 2011-08-12 05:23 | パン屋のたわいもない話


<< パンと野菜のセット発送中 親子。 >>