酸味について考える
コメントでパンの酸味について質問をありました。
今日は私なりに自家製酵母パンの酸味についてお話したいと思います。

自家製酵母のパンの代名詞とも言える「酸味」だが、
わざわざのパンの自家製酵母で作るパンのほとんどは、酸味を感じさせないように作っている。
(こうぼ山食とご飯みたいなカンパーニュについては例外で、あえて少し酸味を出す。)

自家製酵母のパンの酸味の原因は、主に酢酸菌や乳酸菌が活発になった結果である。
空気中には無数に浮遊している菌があり、そこで酵母液を培養すると、
酵母液に空気中の様々な菌が繁殖し活発化して酵母ができあがる。
酵母を培養する際、酢酸菌や乳酸菌が優位な条件を作らず、活発に活動させないことが
酸味のないパンの作り方と言えるだろう。

なんのこっちゃと思われるかもしれませんが、パン作りは科学です。
詳しいことはこちらのサイトによく書いてありましたのでご参考までに
このことを大前提に考えれば、酸味のないパン作りはそれほど難しいことではありません。
ですが、私もいまだに失敗して酷い酸味のパンを焼くことがあります。
それは工房の環境を一定にできないことが原因であるのですが、
一定の環境でない場所で、職人的感を研ぎ澄ますことに楽しみを見出しています。

(質問)
レーズン酵母の場合、酵母が弱く発酵に時間がかかって膨らまないと、
酸味のあるパンになりました。最近小麦から酵母をおこしました。
焼き色はあまりよくないけれど酸味のないパンが焼けてました。
そして一昨日、久々に会心の作のパンができた!
と喜んで食べてみたら、かすかに酸味がありました。
わざわざさんの酵母は小麦ですよね。でも酸味がないですよね。
今までは酵母が弱いと酸味がでると思っていたのですが、
今回の小麦酵母は酵母は強くても酸味がでる・・・
酸味のない酵母をおこすコツはなんなんでしょうか。

さて、先ほどの話を踏まえて話すと、質問中の「レーズン酵母で酸味のあるパンが焼けた」
ということですが、これはレーズンで起こしたという点が原因ではありません。
単純に発酵力が弱いということですので、酵母の中に発酵を司る菌以外の菌=乳酸菌や酢酸菌が
多いためと言えます。だから必然的にパンは酸っぱくなります。
発酵力の弱い元種では酸味のないパンは焼けません。
酵母の起こし方で雑菌がより多く混ざっている場合が多いです。

「小麦の酵母で強くても酸味が出る」という点ですが、これも小麦の酵母という点は
原因ではないと思います。「焼き色はあまりよくないけれど酸味のないパンが焼けていた」というのは、
1次発酵又は2次発酵が未熟で、充分に小麦粉のデンプンをブドウ糖にを分解できなかったためです。
きちんとした発酵ができていれば、デンプンがブドウ糖に分解され、焼き色がきれいにつきます。
焼き色は生地内の糖分や油分が色づいて付くものです。発酵が未熟な場合や
ブドウ糖が菌に全て食べつくされてしまった過発酵の状態では色が付きません。
この場合、酸味がなかったということですから未発酵の状態です。過発酵の状態は酸味が出ます。

発酵力が強い種で酸味が出る場合、温度管理の問題が大きいです。
まずは捏ね上げ温度、ここで30度をオーバーしていたらパンに酸味が出る可能性が
大きくなります。乳酸菌は30度を超えると活発に活動を始めます。
その外に1次発酵、2次発酵の温度管理の問題も影響します。低温で長時間発酵させることに
よって生地温度を抑えることができ、パンの酸味を抑えられます。

その他にも酵母の好むPhなどの問題がありますが、Phなんか一々計測してパン作りは
していませんので、気温と生地温度、後は職人的感のMIX、まぁいつもどおり大体の
パン作りによる適当な論理なので、あんまりアテにはできませんが、
それでも以下の点は経験に基づいたい実感で、パン屋がどうにかできてますので、
大いに参考にしていただきたいと思います。

つまりは、
・発酵力の強い元種を使用し、
・捏ね上げ温度を低めにし、
・低温で発酵させる
ことによって酸味の出にくいパンを焼くことができます。
ただ、こうは言っても、これが難しいんですね。

夏場のパン作りは、温度管理が非常に難しくなりますので、
工房を一定の温度に保てていない状況下では酸味のないパンを焼くのはかなり難しいです。
現状、私のパンも冬場より夏場は若干酸味があります。
ですが、夏って酸っぱいものを食べたくなりますから、それもいいかと容認しちゃったりして、
結構楽な気持ちで今は作ってます。

わざわざではパンを焼くために、酵母のリフレッシュ(種継)をかなり頻繁に行っています。
・パンを焼く前日には必ずリフレッシュ
・低温で元種を保存
・1、2日置きに元種を継ぐ

上記のような頻繁なリフレッシュにより発酵力の強い元種を維持しています。
元種がイケてないとパンはイケなくなりますので、とても大事です。

酵母の強さや酢酸菌や乳酸菌の発生状態について、簡単にわかる方法があります。
元種を食べると一発でわかります。毎回食べて味を覚えてください。
舌につく酸味がある酵母では酸味のあるパンしか焼けません。
うちの酵母は甘いです。すごくいい小麦のいい香りがします。
酸味はほとんどありません。

元種に酸味が出てしまった場合、リカバリーする方法があります。
私も何度かやってしまったのをこの方法でカバーでしていますが、
これは家庭でやると物凄い酵母量になるのであまりお勧めできないかもしれません。

・酸味の出た酵母を100g取り出し、その3倍量くらいの小麦粉でリフレッシュします。
・室温で2倍くらいになったら、さらに3倍量くらいの小麦粉でリフレッシュ。
・それでまた室温で2倍。その後さらに3倍量の小麦粉でリフレッシュ後、低温で発酵させます。
(室温は20度前後が最適かも。気温が高いと難しいです。)
 
ここまでは1日でやります。短時間で急激に粉量を増やして発酵させることによって
酵母菌上位の状態を作れます。酢酸菌や乳酸菌の活動がかなり抑えられるはずです。
これで酸味がほぼ消えてきますが、まだ感じられる場合は繰り返していきます。
短時間で急激に元種量を増やすのが、経験に基づくポイントです。
うちでは5キロほどの元種を管理しているので、できるやり方ですが、家庭だとキツイです。
新しく酵母液を培養した方がよいかもしれません。
私はこのやり方で、元種のリカバリーに成功を収めてますが、
粉量を減らしてできるかは全く試していませんので、あしからず。

ご飯みたいなカンパーニュは少し変わった作り方をしています。
2次発酵の過程で酸味を少し出すように調整します。生地作りと発酵時間の関係の微調整です。

こうぼ山食は捏ね上げ温度をわざわざの他のパンより高くしています。
なので酸味が出ます。こういうパンがお好きなための方へのパンです。
私も時々食べますが、これは乳酸菌がちょろっと利いた感じのパンです。
酢酸菌まで行くと、かなり酸っぱいですから。

ということで、今現時点で考えられるパンと酸味の関係です。
この記述は2010/11/22に書きました。経験則に偏るところが多く、未熟な可能性があります。
どうぞ皆さん、お手柔らかにお願いします。

PS
ある程度パン作りを楽しみ時間が経ち、疑問が出てきたら(パン「こつ」の科学 吉野 精一 (著))の
購入をお勧めします。パンの科学入門編で非常にわかりやすいです。
(時々疑問の残る解釈もありますが・・・)
これ一冊頭に入ってれば、パン屋クラスの大抵の疑問は解決できます。
それ以上の知識をお求めの場合は、生物化学、微生物学、有機化学なんかを
勉強しないといけません。家庭で楽しく焼く分にはこの本の知識で充分だと思います。
是非読んでみてくださいね^^
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by wazawazapan | 2010-11-23 08:43 | パン考


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