必然の出会い
古いガラス戸をガラガラッと引いて入ると、大きなダンボールが3つ並んでいる。
「来たな」と思いながら、部屋の奥に視線を移すと、おじさんが「来ましたよ」と笑顔で挨拶をしてくれる。
ああ、あの時と同じだなと、2年程前に小鹿田焼の小皿を揃いで買った時のことを思い出した。

7年前、東京から小諸に越して来た時、やっぱり懐古園に行ったのだが、懐古園はそこそこに、
程近い「べにや民芸店」が気になって気になって仕方なかった。
古びた漆喰の壁に木枠のガラス戸のはまった味のある概観で、中にポツリポツリと陶器などが
並んでいるのが見える。入ってみると、品のいいお茶碗たちが整然と並んで、
カゴや麻布なんかもある。ひとつひとつ手にとっていいものだなぁと思いながら値段を見ると、
どれも少しがんばれば手に入れられるような価格で、よしここに通おうと心の中で決め、
特に何も買わず出てきたのだった。

それから酷い時は毎週、月に1回は絶対、通うことになるのだが、ほとんど何も買わず、
いつもおじさんがいらっしゃいと言い、私は軽く頭を下げ、商品の陳列が変わったなとか、
少しの変化も見逃さないように店内をグルッと一周して、また、あのガラス戸をガラガラッと
開けて出て行く。時々、日本酒は飲まないけどお猪口なんかを買ったり(お猪口にバターを
入れて出すのが好き)、時々、麻布を買って暖簾を縫ったり、行く頻度の割にものすごい
購入頻度が少ない。

私はこういう時、非常に無口で、月に何度も通ってもおじさんに話しかけることもなく、
ただ時々、欲しいなぁと眺めていたものが、他の誰かの手に渡ってなくなった時、
本当に欲しかったことに気づいて「アレは今度はいつ入りますか?」と聞くのだった。

そのアレの一つに小鹿田焼の飛び鉋の皿があって、2年程前、大きなダンボールの中から
新聞紙に包まれたお皿を出しながらおじさんが「来ましたよ」とにっこり笑ってくれたのだった。
もう嬉しくて嬉しくて、「手伝っても良いですか?」とたくさんの新聞紙を掻き分けて、
皿を夢中で眺めながら、小鹿田の里の話などずっと聞きたかったお皿の話に花が咲いたのだった。
買う気もなく寄るので金もない悪い客の私は、もちろん、財布の中にお金などなく、
小鹿田の皿は取り置きさせてもらい、次の日すぐ取りに行ったのだった。

友人に新築祝いに何が欲しい?と聞かれた時、「べにや」で何かを買ってくれないか?と
頼んだり(通称べにやしばり)、小諸に来てから増えたものはべにやさんのモノが多い。
とっても好きで、これからも通いたい、大好きなお店。

以前から気になっていた白磁のお皿が今度入荷するからまたおいでとおじさんに言われて、
隙を見つけて毎週のように通う。しかし、なかなか予定通りに荷物が届かず、
ごめんね、来週くらいかななんてそんな会話が3回くらい。
それで、今日、「来ましたよ」となったわけで。

「僕は他の仕事があるから、好きに広げて開けて良いよ」と鋏を渡され、荷を解く。
今度は何かな?とワクワクしながら新聞紙を開ける作業はとても楽しく、おじさんが時々、
何かいいのあった?と様子を見に来て、これは素晴らしい!このシノギのバランスが凄いだの、
二人で盛り上がる。今回の荷には7寸のお皿はないのですか?なんて、ずっと
探していた白磁の7寸皿を目を皿のようにして探すが中々みつからず。あ~ないんだぁ。と
がっくりしていると最後の荷から出てきたのです!

1枚の皿を持って2階に駆け上がり、「ありました!」とおじさんに興奮気味に言うと、
どれ、良いのを見つけたねと言いながら、キッチンの中から同じ白磁の7寸皿を持ってきてくれた。
ずっと以前にお店用にこの皿を買ったと言う。
時間の経ったその皿は少し味が出て、ひっくり返すと高台がいい感じに古びて雰囲気がよい。
伝票を渡されていくらだか見てご覧。思っていたのと同じくらいの値段。
何枚欲しいの?全部もらって良いですか?と5枚。

サンタさんからクリスマス後にプレゼントです。パン屋がんばったね、お皿あげますよ。
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by wazawazapan | 2009-12-27 20:35 | パン屋の休日


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