艶のあるクラム
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昨日はパン屋をしながら雑誌の取材を一日受けた。
営業と通販と取材とでこんがらがるかなぁと心配だったのだが、
店が暇で助かった、イヤ、助かったのか?・・・。
この写真は、撮っているところを撮影するという1コマ、
パン作っているところとか写真撮ってるとことか、普段人に見られない部分を
見られている緊張感を味わう。記事が楽しみです。遠くから本当にありがとうございました!
(本の名前を失念してしまったので、発売日等がわかったらお知らせしますね^^)

お昼を食べながらライターさんとお話していた時、ひょんなことから他のパン屋の話になり、
自分がパンを焼き始めてパン屋を意識しだした時の話になった。
すっかり自分の頭の中から抜けていたのだが、「そう言えば・・・」と話し始めると、
当時の記憶が鮮明に頭に蘇ってきたのだった。

パン屋になると決めた数年前、他のパン屋の食べ歩きに「研修」と称して散在していたことがあった。
パンを習ったことのない私にとって、パン屋のパンを食べることは最大の勉強であり、
一口一口を食べながら、入っている材料を推察して作ったり、製法を推察して作ったり、
そういうのが楽しく楽しくて仕方がなかった。
おいしいパンがあると聞けば、週末にドライブがてら遊びに行き、観光とおいしい研修をしに
いくのが家族の楽しみとなった。

自画自賛タイプの我々のことだから、滅多に他のパン屋に負けないのだが、
当時一軒だけ、ウチより確実においしいパン屋があった。
何度も何度もそのパン屋に通い、パンを買い、薄切りにしたり、厚切りにしたり、
1週間くらい放置したり、ひっくり返して眺めたり、なんでこのパンはおいしいのだろうと
食べながらいつも話していた。

ウチのパンになくて、このパンにあるもの。それは「艶のあるクラム」だった。
カンパーニュをカットすると所々に大きな穴が空き、それが艶々と光っている。
この艶のところにくると、何ともいえない香りが封じ込められているような、
そして、口に含むと水分を含んだもっちりとした食感。これがおいしいんだ。
今でこそ流れでそういうパンをよく見かけるようになったが、4,5年前はそんなになかった。

それから、どうやったら艶のあるクラムができるのだろうと考えた。
水分を多く含んでいるからツヤツヤしているに違いないと、単純な私は自分のパンの水分量を
どんどん増やした。以前このブログで話したが、ママ友にパン屋のパンは2,3日すると
硬くなるのが嫌だと聞いたのもこの頃だった。この問題もこれで解決するに違いないと思った。

しかし、水分量を増やすと生地がベタつき、成型もロクにできない。
考えた末、冷蔵庫で生地を冷やしてから、成型することにした。
その頃は長時間低温発酵とか全く知らず、ベーカーズパーセントとかも知らず、
今思えば、ベーカーズパーセント100%とか120とか200くらいまでやって
型に詰めて焼いていたから、知らないことって素晴らしい(笑)

その後、何とか自力で何とか艶のあるクラムのパンを焼くことに成功し、
それがロデブだったのだが、その頃は水分量が非常に多いロデブというパンが
この世で数百年前から焼かれていることも露知らず、すげぇパンを作った!と
例の自画自賛をし、編み出した編み出したと浮かれていたのだった。

数日後、図書館で製パンの本を読んでいると、長時間低温発酵も、ロデブもしっかりと存在し、
パンの歴史の奥深さに感嘆と驚愕をし、チキショウ、もう普通にあるし・・・と
がっくりと肩を落としたことを覚えている。惨敗。

ロデブは今、店に出していない。アレを焼くとオーブンが占領されてしまい
パンを焼くスケジュールに組み込めないのだ。新しいオーブンが入ったら
超カッコいいロデブを焼きたいから、それまでに練習しておくことにする。
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by wazawazapan | 2009-12-13 21:02 | パン考


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